終身雇用や年功序列を特徴とする日本的経営手法も崩れつつあり企業家を目指す方も多くなりました。小規模事業なら無理な法人化は不要ですが、反面法人化するメリットも数多くあります。以下法人(会社組織)のメリット、デメリットについて主に個人事業との比較で考えてみました。
メリット1 取引先に対する信用度が高まります。
財政状況や経営状況が把握しにくい個人事業に比べ取引や金融機関からの融資を受ける場合、信用面で有利に扱われることがある点は否めません。
メリット2 経営者の責任は有限責任です。
不幸にして事業に失敗して倒産しても経営者個人は出資した分の責任を負えば済みますが個人事業主の場合はすべての責任を負うこととなります。倒産した時の責任の重さが違います。
メリット3 税金面で有利です。
事業所得が低い段階では、国税においてその累進税率は法人税率より所得税率のほうが低いなど個人のほうが法人の税負担より軽くなる場合がありますが個人事業にかかる税金は基本的に超過累進税であります。反面法人の所得にかかる法人税は税率が原則として一律となるため、所得が多くなるほど有利になります。
参考までに後のほうに法人と個人事業の税額比較を行ってみました。
メリット4 たとえ赤字でも社長の給料は保証されます。
個人事業は「収入-経費=給料」であり給料のないこともあります。
メリット5 会社には相続税はかかりません。
個人事業の場合は個人財産、事業用財産も相続税の対象となります。
メリット6 優秀な人材を集めやすい。
従業員を雇用した場合社会保険や労働保険への加入が義務づけられており個人事業に比べ優秀な人材の募集、採用の面で有利です。
メリット7 経費面で有利です。
個人事業の場合個人分と事業分の区別が判然としないため必要経費が認められないケ-スもありますが、会社組織にすると個人と会社が経理上も明確に区別されるため個人事業では認められない経費も認められることとなります。
以上が法人(会社組織)にするメリットですが、ではその反面どんなデメリットがあるのでしょう。これも列挙してみます。
デメリット1 手続き面で煩雑さが要求されます。
法人にすると設立登記の手続きが必要になりますし、事務所移転、役員変更等の場合もその都度の登記変更が必要です。
デメリット2 業種変更にも手続きが必要です。
法人の場合は定款の「目的」に記載された事項に限定されるため商売替えの際も手続きが必要です。これに対し個人事業の場合は自由にできることとされています。
デメリット3 正規の簿記の知識と決算書が必要とされます。
複式簿記により帳簿をつけなければならないため詳しい会計や簿記の知識が求められます。決算でも損益計算書と貸借対照表の作成が義務づけられますので必然的に専門家に指導を受けることも出てきます。
デメリット4 資本金の面で会社組織の場合は最低限度額が定められています。
有限会社で300万株式会社で1000万です。
個人事業の場合は制限はありません。
以上が大まかな法人設立にともなうメリット、デメリットの対比です。
事前相談、設立書類作成、許認可を必要とする業種についての書類作成や申請等々、法人設立に関連して行政書士は様々な形でお手伝いしておりますので御気軽に相談下さい。
■参考 <会社組織と個人事業の税額の比較について>
仮に会社が2500万の売上を上げ経費として500万、経営者の給与として1000万を支払った場合、会社としては課税所得1000万に対し合計税額で344万、経営者個人としては様々な控除を受けた後の金額530万に対し合計税額で116万の課税となりト-タルでの負担は460万となります。
これに対し個人業者が2500万の売上で500万の経費を計上した場合控除後の課税所得は1750万となり最終的に671万5千の負担となります。実に211万5千の差額の出ることがわかります。所得が大きくなると法人(会社組織)の税制面での優位さが良くわかります。