せんべい蒲団

つげ義春は一部に根強いフアンを持つマンガ家である。

彼のことを鬼才と呼ぶ人もいるが私はこの人の書く旅先の紀行文が大好きである。

その中でも貧困旅行記という文庫本は愛蔵の一冊となっている。

地方のひなびた温泉地を貧乏旅行して回った時の思い出を綴ったものであるが全編暗いトーンで不思議な味わいがある。

その中の「ぼろ宿考」という一文に次の一説がある。

「私は、貧しげな宿屋を見るとむやみに泊まりたくなる。そして侘しい部屋でセンベイ蒲団に細々とくるまっていると、自分がいかにも零落して、世の中から見捨てられたような気持ちになり、なんともいえぬ安らぎを覚える。」

人間元気な時もあれば落ち込む時もある。

落ち込んだ時にいかにして気持ちを立て直すかということも大事なことである。

天気の良くない寒い時期、気分が落ち込むと私には不思議とこの一文が頭に浮かぶ。そして彼の行為を自分自身が体現しているかのような錯覚感を覚えなんとなく落ち着いた気分になる。

暗い性だと思いつつ、似たような思いの人もいることに、どこか安堵もしているのだろう。

今日も寒く、朝からシトシトの雨そして雪の続く一日である。